2020年度第2回ボランティア研修会 ご報告
2021年 3月13日(土)、東大阪市文化創造館多目的室にて、2020年度第2回ボランティア研修会を技能実習生の監理団体であるグットハーモニー協同組合の宮本敬太さんを講師に迎え、会場35名、ZOOM4名の参加者のもと開催しました。
宮本さんには、2017年9月の研修会にも『働く学習者について知ろう~日本に来る前・来てから~』というタイトルで講演頂き、働く学習者のおかれている状況に対し、私たちはどういった支援をしていくべきかを考える貴重な機会となりました。今回は「新型コロナウィルス感染症と日本語教育」というテーマでお話し頂きました。
最初に「新型コロナウイルスの影響の整理、~「現場」から考える~」ということで、二つの事例をあげて話されました。
まず、「困窮留学生と現金給付金」について。
新型コロナウイルスの影響で困窮する学生らの現金給付を、文部科学省は外国人留学生に限って成績上位3割程度のみとする要件を設け、日本人学生との間に、学業や生活を支える支給に差をつける形となり、能力主義などによる線引きや選別が見られること。
もう一つは「入国管理局収容施設でのクラススター問題」について。
在留資格のない外国人を収容する東京出入国在留管理局内で2月、新型コロナウイルスのクラスターが発生し、3月3日までに多くの人が感染したことで、閉ざされた環境の中で、職員の対応や置かれている状況に対し、収容者は不安を抱えながら過ごしていること。
種々の新聞記事を通じて事例を紹介され、これらの問題点に触れられました。
そして、これら新型コロナウイルスの影響のように見られる事例から、もともとあった問題が可視化されているのか、あるいは悪化しているのか、また、「科学的」な判断基準の有無や、内国人優先という考え方が見えるのでは、など考えられる事項をあげられました。
休憩のあと、そんな様々な立場に置かれている人々に対して、今、大事だと思うことは何か、それはひたすら相手の「話を聞く」こと。 何か問題が起きた時、それは行政や専門機関に託すことで解決することができるであろう。しかし、その問題によって相手の心の中には様々な思いが起こるはず。それら「心的情景」を、こちらからのコメントや意見は挟まず、細かく、ひたすら聞く、このことが大切であると述べられました。
そして、宮本さんが考える、話を聞く時の「さ・し・す・せ・そ」を述べられました。
さ: さすが / さすがなやぁ → 敬意を示す
し: しんどい / しんどいなぁ → 共感を示す
す: すごい / すごいなぁ → 敬意を示す
せ: せやなぁ → 同意を示す
そ: そうか / そうでしたか / そうか / そんなことがあったん
ですか → 続きを促す
*敬意を示す時に「評価」にならないように。
次に、新型コロナウイルスの影響から、宮本さんの経験や感じた日本語教育の変化について述べられました。
オンラインという方法で「授業」を進める中での経験(検索を繰り返したり、未完成のまま始め、その後自身でバージョンアップしていく等)から、個人的な変化として、
・準備や計画に固執したものを辞める。
すぐに対応が難しいものは「先送り」 例 手書き、ペアワークなど
・オンライン授業によって、新たに対応が必要な事 の実施
・オンラインならではの強み。→ ゲストを招く、動画の活用。
などを述べられました。
また、日本語教室には試行錯誤(イノベーション)が必要ではないかと、言うことで、二つの事柄をあげられました。
一つ目は「お困りごとの解決」。 困ったことを互いにシェアすることで解決が図れる。そして二つ目は、人や情報や物など、既に有るものを組み合わせることでした。
最後に、Prince Ea というミュージシャンの「学校システムを告訴する」という動画が流されました。
裁判所を舞台に、昔から変わらず、画一的な教育をする学校について、「世界は進歩し、今求められることは創造的、革新的、批判的、自立的に考えてつながることができる人。」「皆が異なる長所とニーズとギフトと夢を持っている子供たちに、同じやり方で、同じことを教える、恐ろしいことだ。」「未来に備えているのか。」「彼らの夢のために力を尽くしましょう。 私たちができることに限界などないのです。」( Prince Ea 「学校システムを告訴する」より)など、陪審員に向かって陳述するという約6分のビデオは、研修会に参加した人達に 強い印象を残したようでした。
その後、質疑応答、村井代表の挨拶が行われ、今回の研修会は終了しました。
終了後のアンケートでは「話を聞く時のさ・し・す・せ・そが印象に残った」
「Prince Eaの動画に同感」「宮本さんの提案は斬新で興味深い」などの声が
聞かれました。
by honk_information
| 2021-03-24 11:06
| 日本語教育チーム